iDeCo(個人型確定拠出年金)は、60〜75歳の間に一時金・年金・併用のいずれかで受け取れます。
ポイントは「一時金=退職所得控除」「年金=雑所得(公的年金等控除)」「同種の所得との合算・通算のルール」。この記事では、数字が苦手な方でもサッと判断できるように、まず要点→次に税の仕組み→最後に3つのシミュレーションでわかりやすく整理します。
先に要点(ここだけ押さえればOK)
- iDeCoの一時金は「退職所得」。退職所得控除が使え、(受取額 − 退職所得控除) × 1/2が課税所得。
- iDeCoの年金は「雑所得」。老齢年金などと合算し、公的年金等控除を引いて課税。
- 退職所得控除は“通算”されるため、同じ年に他の退職金と一緒にもらうと控除枠を食い合う。
- 年金課税は“年ごと個別”なので、受給期間を長くして各年の課税を薄める設計も可能。
- 最適解の型:他の退職金が大きい人→年金/併用、退職金が少ない/ない人→一時金も検討、税率が上がる年は避ける。
1. 受け取りの基本仕様(まずここを確認)
- 受給開始可能年齢:原則60歳〜75歳の間で選択(加入年数等の条件あり)。
- 受取方式:一時金(原則1回)/年金(5年以上20年以下)/併用(例:半分を一時金、残りを年金)。
- 他制度との関係:企業型DC・退職金・厚生年金基金の一時金等と重なる年は控除の最適化に注意。
2. 税の仕組み(要点)
2-1. 一時金=退職所得
- 退職所得控除…概略:
20年以下=40万円 × 勤続年数(最低80万円)/ 20年超=800万円 + 70万円 × (年数−20) - 課税所得の求め方:(一時金 − 退職所得控除) × 1/2 が「退職所得」(ここに累進税率適用)。
- 注意:同一年の退職金や企業型DCの一時金とは合算して控除。同じ年にまとめると控除を食い合う。
2-2. 年金=雑所得(公的年金等控除)
- iDeCo年金は老齢年金などと合算したうえで、公的年金等控除を差し引き、残りが課税。
- 控除額は年齢・年金収入額で段階的に変化(目安:65歳未満は最低60万円、65歳以上は最低110万円)。
- 住民税にも年金所得のルールあり(自治体の案内に従う)。
2-3. 併用の考え方
- 一部を一時金で控除を活かしつつ、残りを年金で複数年に分散=各年の課税をならす。
- 他の退職金が大きい年は一時金を回避、後年に年金中心にすると総税負担が下がりやすい。
3. よくある落とし穴
- 同一年に退職金とiDeCo一時金を重ねてしまう…退職所得控除を食い合い、課税額が膨らむ。
- 年金受給を短期に設定…各年の年金額が大きくなり、控除を超える部分が増えがち。
- 65歳到達前/後の控除額の違い…65歳“前”に年金を多く受けると控除が少なく不利になりやすい。
- 他の所得と重なる年(譲渡益・退職手当・副業)…総合課税の帯が上がり、年金課税が重くなりやすい。
4. シミュレーション(3つの代表ケース)
※概算イメージです。実際は所得控除・税率階層・住民税・社会保険料等で結果が変わります。
ケースA:他の退職金が大きい人(勤続30年、他社退職金1,500万円/iDeCo残高600万円)
- 前提:退職所得控除=800万 + 70万×(30−20)=1,500万円
- 同一年で一時金にすると:合計2,100万円 − 控除1,500万円=600万円 → 課税対象=600万×1/2=300万円
(他の所得と合算し累進適用) - 最適化の一例:退職金のみを一時金、iDeCoは年金(10〜20年)で控除活用と分散。
ケースB:他の退職金が少ない/ない人(勤続15年、退職金200万円/iDeCo残高600万円)
- 退職所得控除:40万×15年=600万円(最低80万円以上満たす)
- iDeCoを一時金:受取600万円 − 控除600万円=課税ゼロ(×1/2しても0)
- 最適化の一例:退職金と同年でも控除で相殺されやすい。一時金受取の候補。
ケースC:公的年金と併せて年金受給(65歳以上、年金収入120万円/iDeCo年金60万円/年×10年)
- 合計年金収入:180万円
- 公的年金等控除(65歳以上の最低枠):110万円(目安)
- 課税対象の概算:180万 − 110万=70万円(ここから基礎控除等をさらに差引)
- 最適化の一例:受給年数を長めにして各年の年金額を控除枠内に寄せると課税が薄まりやすい。
5. 併用設計のコツ(失敗しない順番)
- 他の退職金の見込み額と支給年を確定する(会社へ確認)。
- 退職所得控除(勤続年数ベース)を試算し、同年合算の可否を判断。
- 一時金で控除が活きる分を見極め、余剰分は年金へ回す(10年〜20年)。
- 65歳前後の控除差を意識して、開始時期と期間を調整。
- 他の所得(譲渡益・不動産・副業)が多い年は年金額を抑える(または開始を遅らせる)。
6. 受け取り方のフローチャート(簡易版)
他の退職金が大きい ⇒ はい ─→ iDeCoは年金中心(控除の食い合い回避)
いいえ ─→ 一時金の控除で相殺可能? はい → 一時金有力
いいえ → 併用(期間長め)
65歳到達? はい → 公的年金等控除が増える → 年金額を控除枠内に寄せる
いいえ → 控除が小さい → 受給開始を遅らせる/額を抑える
7. チェックリスト
- □ 会社の退職金の見込み額と支給年を確認した
- □ 退職所得控除(勤続年数から)を試算した
- □ 公的年金等控除(年齢・年金収入)を把握した
- □ 同一年合算の有無(退職金・企業型DC一時金)を確認した
- □ iDeCoは一時金/年金/併用の案を作り、10年〜20年の年金期間も比較した
- □ 65歳前後の控除差と、他の所得が多い年を避ける計画を立てた
- □ 住民税・社会保険料への影響もメモした
8. よくあるQ&A
Q. iDeCoの一時金は何回でも受け取れる?
A. 原則は1回です(制度設計上の例外は最新の運用を要確認)。分割して複数年に置く設計は年金受取で行います。
Q. 年金受取は最短・最長どのくらい?
A. 5年以上20年以下が一般的です。期間を長くすると各年の課税が薄まりやすくなります。
Q. 企業型DCとiDeCoの一時金を同年にもらっていい?
A. 可能ですが退職所得控除を通算するため、控除を食い合う可能性があります。年をずらす等の最適化を検討してください。
Q. 65歳前に年金受取を始めるのは損?
A. 一概に損ではありませんが、65歳未満は公的年金等控除の最低額が小さいため課税が増えやすい点に留意を。
9. まとめ
iDeCoの出口戦略は、退職所得控除と公的年金等控除をどう使い分けるかに尽きます。
他の退職金が大きい年に一時金を重ねると控除が薄まりがちです。併用や年金期間の設計で各年の課税をならし、65歳到達前後の控除差も考慮しましょう。
迷ったら、退職金の支給年→退職所得控除→公的年金等控除の順で紙に書き出す。これが最短ルートです。
最終更新日:2025年11月7日