同じ借入額でも、固定金利と変動金利では月返済も総支払も大きく変わります。重要なのは「今いちばん安い」より、家計が耐えられる範囲での最小リスク×妥当コスト。本記事は、数字が苦手でも意思決定できるように、要点→仕組み→シミュレーション→タイプ別の結論の順でわかりやすく整理します。
目次
要点(ここだけ押さえればOK)
- 固定:返済額が安定。保険料のように金利上昇リスクを前払いで回避。長期の安心を買う選択。
- 変動:初期返済は軽い。ただし金利上昇で月返済が増える不確実性を負う。自動で安くはならない。
- 迷ったらミックス(固定と変動を半々など)や固定期間選択型(10年固定→残り変動)も有効。
- 繰上返済・借換え余力(現金や金融資産 & 収入見通し)がある家庭ほど変動と相性良し。
- 育児・教育期/単収入/共働き解消の可能性がある家庭は固定やミックスで「悪い局面」に備える。
1. まずは仕組みを知ろう
| タイプ | メリット | デメリット | 向く家計 |
|---|---|---|---|
| 全期間固定 | 最後まで返済額が一定。金利上昇に強い | 初期金利が高め。総支払も高くなりがち | 収入変動が怖い/教育期が重なる/長期安定重視 |
| 変動 | 初期返済が軽い。繰上返済で元本を削りやすい | 将来の返済増に弱い。制度の上限/見直しに要注意 | 共働き/余剰資金で繰上返済可能/借換検討力あり |
| 固定期間選択・ミックス | 初期の安心を確保しつつ、全体負担を抑えやすい | 満了後の金利リセットに注意。設計がやや複雑 | 「今10年だけ守りたい」「半分は安定・半分は攻め」 |
2. 具体的な数字で比較(モデル試算)
※概算。手数料・保証料・団信上乗せは含めない単純比較です。
前提:借入4,000万円/35年返済
- 固定1.5%の場合:月約122,474円、総利息約1,144万円
- 変動0.6%(据置)の場合:月約105,612円、総利息約436万円
→ 初期は変動が月約16,900円安い(年約20万円差)。ただし「ずっと0.6%」は保証されません。
シナリオ比較(変動の金利上昇に備える)
- パターンA:0.6%で5年→1.2%で残り30年
総利息の概算:約778万円(固定1.5%の約1,144万円より安い) - パターンB:0.6%で5年→1.2%で5年→2.0%で残り25年
総利息の概算:約1,116万円(固定1.5%とほぼ拮抗)
→ 結論:将来2%近辺まで上昇すると、固定の安心料と変動の期待値が拮抗。
金利が「緩やかな上昇」にとどまる見通しなら変動金利が良かったとなるが、「急騰・長期高止まり」を懸念するなら固定やミックスを検討する必要があります。
3. 変動を選ぶなら「3つの備え」
- 金利上昇ストレステスト:金利+1.0%/+1.5%/+2.0%で月返済がいくらになるか金融機関の試算表で確認。「+1.5%でも家計が崩壊しない」なら変動適性あり。
- 繰上返済ルール:毎年の賞与・余剰を元金に。最初の10年で元本を減らせば、仮に後半で金利上昇しても影響が小さくなる。
- 借換え機動力:借換え諸費用(事務・保証・司法書士・印紙)を把握し、差引メリットが出るレート差・残存年数をメモ。固定へ逃げる道を常に確保。
4. 固定を選ぶなら「3つの最適化」
- 固定期間の選び方:「教育費ピーク」「単収入期間」など最も守りたい10年~15年を固定(固定期間選択型)。その後の金利動向で乗換判断。
- 団信と金利の総合比較:全期間固定は金利が高めでも、がん50%保障・全疾病など団信上乗せ込みの総コストで比較。
- 手数料方式:定率型の高額事務手数料より定額型が有利なケースも。総支払の“隠れコスト”を見落とさない。
5. ミックス&固定期間選択:使いどころ
- ミックス(例:固定50%+変動50%):金利上昇局面でもダメージ半減、下降局面でもメリット半減。安定と余地のバランスを取りたい世帯に。
- 10年固定→変動:住宅ローンを組む際に子の教育費が重い場合、最初の10年は固定金利でリスクを把握する守りに徹して、その後は金利次第で借換え/繰上返済。満了時の見直し前提の運用。
6. 家計タイプ別の指針
タイプA:共働き・余剰率高・繰上返済OK
→ 変動 or ミックス。金利上昇に備え、毎年の繰上返済を実行する前提。
タイプB:単収入・教育費ピークが近い
→ 固定 or 固定期間選択。10年の安心を確保。残債を減らしながら次の選択肢を準備。
タイプC:起業/転職で収入変動が大きい
→ ミックスで波を均す。固定比率を高めに(60%~70%)。
7. よくある誤解と回避策
- 「変動はすぐ返済額が上がる」:金利見直しルール(半年ごと)と、返済額見直しルール(5年ごと等)を区別。返済額の上限(125%ルール等)があっても、未払利息の増加には注意。
- 「固定は絶対に損」:金利上昇が一定幅を超えると、固定の保険価値が勝る。家計破綻リスクを下げる費用と捉える。
- 「借入額は年収倍率だけで決める」:月キャッシュフローで判断。将来の保育・教育・車・医療・介護の予算まで見込む。
8. 5分でできる意思決定フレーム
- 手取り・固定費・教育費を整理し、安全返済比率(住居費/手取り)を20%~25%目安に設計。
- 金利+1.5%のストレスでも返済比率が30%を超えないか確認。
- 繰上返済計画(年○万円)と借換条件(レート差○%、残年数○年)をメモ。
- 上記で不安が残るなら固定orミックス、問題なければ変動を軸に。
9. チェックリスト
- □ 家計の安全返済比率(20%~25%)を守れる
- □ 金利+1.5%上昇する悪いシナリオも考慮している
- □ 繰上返済の資金計画(年額)を決めた
- □ 借換え時の諸費用と損益分岐レート差を把握
- □ 団信・手数料・保証料を“金利以外のコスト”として比較
- □ (固定期間型)満了時の再設計シナリオを用意
10. まとめ:結局どっちが得?
「得」は金利の未来+あなたの家計耐性で変わります。
将来2%近い上昇なら固定の保険価値が効き、緩やかな上昇なら変動の初期の低金利が効く可能性が高い。
迷ったらミックスや固定期間選択で「守り」を確保しつつ、繰上返済と借換えで攻める。これが多くの家庭にとって有効です。
最終更新日:2025年11月7日