株や投資信託で損失が出た年は、確定申告をすると翌年以降3年間まで利益と相殺(繰越控除)できます。ただし、申告の“うっかり”で権利を失うケースが毎年のように発生します。この記事では、申請ミスの上位5つと実務チェックリスト、申告フォームの要点まで、はじめての方でも迷わないようまとめました。
結論(ここだけ押さえればOK)
- 繰越控除は「上場株式等」区分の損失が対象(株・ETF・多くの公募株式投信)。
- 損失が出た年から連続して毎年申告しないと、繰越の権利が消える。
- 配当は申告分離課税を選択すれば、譲渡損と通算できる。
- NISAは非課税のため通算・繰越の対象外。混ぜない。
- 証券会社が複数でも、確定申告で一括通算できる(各社の「年間取引報告書」を集約)。
繰越控除の申請ミスTOP5
1. 「損失が出た年」の申告を忘れて翌年だけ出す
最も多い失敗。繰越控除は損失が生じた年から連続提出が大原則。翌年に利益が出てから申告しても、前の年を申告していないと繰越自体が無効になります。
回避策:損が出た年は利益がなくても必ず申告。e-Taxの「申告書B+株式等の保有に関する明細」で繰越欄を作成。
2. 配当の課税方式を「総合課税」にして通算できない
上場株式等の配当は申告分離課税を選ぶと、譲渡損と損益通算OK。総合課税を選ぶと通算不可です。
回避策:繰越を活かしたい年は、配当の入力画面で「申告分離課税」を選択。住民税の取扱いは自治体の案内も確認。
3. 証券会社が違う損益を放置(自動相殺できていない)
同一証券会社の特定口座(源泉徴収あり)内は年内で自動相殺されますが、会社をまたぐ損益は確定申告をしないと相殺されません。
回避策:各社の特定口座年間取引報告書を揃えて、申告で合算。還付が出るケースもあるのでしっかり見直しましょう。
4. 「上場株式等」以外の区分を混ぜて計算
先物・オプション・FXは「先物取引に係る雑所得等」の別枠。仮想通貨は原則雑所得(総合課税)で、株の損益とは通算・繰越不可。
回避策:区分を厳密に分ける。上場株式等のみを繰越控除に使う。混ぜると計算誤りや否認の原因に。
5. NISAや一般口座の扱いを誤る
NISAは非課税のため通算も繰越も不可。また、一般口座は自分で年間損益を集計する必要があります。
回避策:繰越に関係するのは課税口座の上場株式等のみ。NISAの損益は入れない。一般口座は売買明細から自力で集計。
申告の全体フロー(はじめての方向け)
- 資料を集める:各社の特定口座年間取引報告書、一般口座の損益計算(必要ならExcel計算)を準備。
- 配当の課税方式を決める:繰越・通算したい年は申告分離課税。
- e-Tax/申告ソフトで入力:「株式等の譲渡所得等」「上場株式等の配当等」を選び、損益・源泉税額を転記。
- 繰越欄の作成:控除しきれない損失は「翌年以降へ繰り越す」にチェック。
- 添付書類の確認:年間取引報告書の添付・省略可否、マイナンバー、本人確認書。
- 送信・控え保存:受信通知を保存。翌年以降も繰越を使うなら毎年申告を継続。
実務で役立つ「区分表」
| 区分 | 主な対象 | 通算 | 繰越 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 上場株式等 | 国内外の上場株・ETF・公募株式投信 | 同区分内で可(配当は申告分離で可) | 3年可(要申告) | 繰越は連続申告必須 |
| 先物等 | 日経先物・オプション・FXなど | 同区分内で可 | 3年可(要申告) | 税率や書式が別枠 |
| 仮想通貨 | BTC/ETHなど | 他区分と不可 | 不可 | 同年内で合算は可 |
| NISA | 新NISAの株・投信 | 対象外 | 対象外 | 非課税のため |
ケーススタディ(数字でイメージ)
ケースA:2025年に−60万円損失。確定申告を提出→2026年に+50万円の利益。
2026年申告で繰越損失残−10万円、さらに2027年まで繰越可。
もし2025年の申告を忘れると、2026年の利益に相殺できず課税に。
ケースB:配当(源泉あり)+20万円、株の譲渡損−30万円。
配当を申告分離にして通算=−10万円を翌年へ繰越。
総合課税を選ぶと通算不可、−30万円のうち配当分を活かせない。
締切スケジュールと保存ルール
- 申告期間:例年2月中旬〜3月中旬(e-Tax推奨)。
- 書類保存:年間取引報告書・受信通知・計算メモは7年保存が目安。
- 還付申告:期限後でも5年以内なら可能。ただし繰越の「連続申告」は守る。
最終チェックリスト
- □ 損失が出た年から連続して申告している
- □ 上場株式等とその他区分を混ぜていない
- □ 配当は申告分離課税を選択(通算したい年)
- □ 証券会社ごとの年間取引報告書を全て反映
- □ NISAの損益を通算に入れていない
- □ 翌年以降も繰越を使うため毎年申告する計画を立てた
参考(ブックマーク推奨の一次情報)
最終更新日:2025年11月6日