「利益と損失をまとめて相殺したい」「証券会社が複数あるけど、どう申告すればいい?」――そんな疑問に、株式・投資信託と仮想通貨(暗号資産)の損益通算ルールをまとめ説明します。また、特定口座の使い方から確定申告のポイント、繰越控除やNISA口座の扱いまで、初めてでも迷わない実務手順で解説します。
最初に要点(ここだけ押さえればOK)
- 株・公募株式投信・ETF(上場株式等)は同じ区分で損益通算OK、翌年以降3年の繰越控除OK(確定申告が毎年必要)。
- 配当は申告分離課税を選べば、株・投信の譲渡損失と通算OK。
- NISA口座の損益は通算に使えない(非課税のため)。
- 仮想通貨は原則雑所得(総合課税)。他の区分と通算不可・繰越不可。同一年内の仮想通貨同士は合算計算はできるが、赤字を他所得にぶつけることは不可。
- 異なる証券会社間の通算・配当との通算・繰越控除は、特定口座年間取引報告書等を使って確定申告を行う。
1. 区分の違いで「通算の可否」が決まる
| 資産区分 | 主な対象 | 課税方式 | 損益通算 | 損失の繰越 |
|---|---|---|---|---|
| 上場株式等 | 国内外の上場株・ETF、 公募株式投信(多くのインデックス/アクティブ) | 申告分離(20.315%) | 同区分内で可 (配当は申告分離選択時に可) | 3年可(要確定申告) |
| NISA口座 | 新NISAで保有する上場株・投信等 | 国内税非課税 | 不可(通算に使えない) | ― |
| 仮想通貨 | BTC/ETH等(個人) | 原則雑所得・総合課税 | 他区分と不可。同年内の仮想通貨取引は合算計算 | 不可(翌年以降に持ち越せない) |
※税率・区分は個人一般を想定。先物やFX等は別区分(「先物取引に係る雑所得等」)で通算・繰越ルールが異なります。
2. 株・投信の損益通算:3ステップで実務フロー
Step 1:同一証券会社内は「自動精算」
特定口座(源泉徴収あり)なら、同一証券会社内の譲渡益・譲渡損は年内で自動相殺され、源泉徴収税額も自動調整されます。
ただし他社口座の損益や配当との通算、繰越控除までは自動では反映されません。
Step 2:異なる証券会社間・配当との通算は「確定申告」
- 各社の特定口座年間取引報告書(1月上旬~中旬に交付)を取得。
- 確定申告で上場株式等の譲渡所得等と、上場株式等の配当等(申告分離課税を選択)を入力。
- 合算後に納めすぎの税金が還付されることがあります。
Step 3:控除しきれない損失は「3年繰越可能」
その年に通算しても余る上場株式等の譲渡損失は、確定申告をしておけば翌年以降3年間繰越控除が可能。翌年以降に生じた上場株式等の譲渡益・申告分離課税の配当から差し引けます。
※繰越を使う年も毎年確定申告が必要です。
例:2025年:A証券で株売却−80万円、B証券で+30万円、配当(申告分離)+10万円。
申告により通算=−40万円。通算した損失-40万円は2026~2028年に繰越して将来の利益と相殺可能です。
3. 配当を通算するコツ(申告分離の選択)
上場株式等の配当は、申告分離課税を選ぶと、同じ区分の譲渡損失と通算できます(総合課税を選ぶと通算不可)。
年の途中で大きな含み損を確定させた場合など、配当も申告分離へ切替すると税負担の最適化がしやすくなります。
4. 仮想通貨の損益「ここが違う」
- 原則雑所得(総合課税)。株・投信と通算不可、翌年以降の繰越不可。
- 同一年内の仮想通貨取引は合算して一つの雑所得を計算(利益と損失を相殺)。ただし雑所得全体がマイナスでも、他の所得(給与等)と通算は不可。
- 計算は総平均法/移動平均法のいずれかで期中一貫。国税庁のExcel計算書/FAQが便利。
- 取引所の年間取引報告(CSV等)を整理し、手数料・スプレッド・レバレッジ取引の区分に注意。
例:同年内にBTC+70万円の利益、ETH−50万円の損失 ⇒ 雑所得は+20万円。
ただしこの−50万円を翌年へ繰り越すことや、給与所得と相殺することはできません。
5. 申告の手順(チェックリスト)
- □ 特定口座年間取引報告書を各社で取得(電子交付の日程を確認)。
- □ 配当の課税方式を決める(通算したいなら申告分離)。
- □ 仮想通貨の計算書(総平均/移動平均)で年間損益を算出。
- □ 上場株式等の譲渡所得等、上場株式等の配当等、雑所得(仮想通貨)をそれぞれ入力。
- □ 控除しきれない株・投信の損失は3年繰越を適用(翌年以降も毎年申告)。
- □ NISA口座は通算対象外であることを確認。
6. よくあるミスと回避策
- 配当を総合課税にしてしまい、通算できない:
通算したい年は申告分離を選択。 - 証券会社が違う損益を放置:
自動相殺されないため、確定申告で合算が必要。 - 仮想通貨の赤字で他所得を圧縮できると誤解:
不可。同年内の仮想通貨間の合算のみ。 - 繰越控除の申告漏れ:
翌年以降に使うためにも、損失が出た年から毎年申告。 - NISAを通算に入れてしまう:
NISAは非課税。計算に入れない。
7. ケーススタディ
ケースA(株の通算+配当):
A社+30万円、B社−60万円、配当(申告分離)+10万円 ⇒ 年間通算=−20万円。この場合の損失は翌年以降3年繰越可能なので確定申告を行い3年以内に利益が出た場合に相殺すると節税ができます。
ケースB(証券会社が2社):
X証券+40万円(自動徴税済)、Y証券−70万円 ⇒ 確定申告で合算し還付発生(X証券の自動徴税が税金を払いすぎた分になる)。残り−30万円は繰越。
ケースC(仮想通貨+株):
仮想通貨−80万円、株+50万円 ⇒ 区分が異なるため通算不可。株の+50万円だけ課税対象。仮想通貨の−80万円は翌年へ繰越不可。
8. まとめ
損益通算は「区分をそろえる」のが必勝法。
株・投信は上場株式等でまとめ、配当は申告分離で通算、足りない損は3年繰越。
仮想通貨は雑所得として同年内にきっちり合算し、他区分と混ぜない――この運用が、手取り最大化と手続きの迷いを減らします。
公式・一次情報(ブックマーク推奨)
- 国税庁:上場株式等の譲渡損失の損益通算・繰越控除
- 国税庁:上場株式等の配当等の申告分離課税
- 国税庁:株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
- SBI証券:特定口座年間取引報告書の交付時期
- 楽天証券:年間取引報告書(交付スケジュール)
- 国税庁:暗号資産の取扱い・計算書(総平均/移動平均)
- 国税庁FAQ:暗号資産は他の所得と通算できない旨
最終更新日:2025年11月6日