— “時間価値の減少”を味方につけてコツコツ取る—
目次
0. この記事のゴール
- セータ(Θ)を“理解”ではなく収益源として使う具体的な手順を身につける。
- 日中の「レンジ相場」で無理に方向を当てずに、時間価値の減少を積み上げる。
- エントリー/エグジット、建玉量、危険シグナルが数値ルールで分かる。
結論:方向当て(Δ)より時間管理(Θ)。イベント無し・レンジ相場の日中帯は、Θを取りに行く“作業”に徹するのがコツです。
1. セータ(Θ)とは?— デイトレ目線での要点
- 定義:1日経過による時間価値の減少量。
- 買いポジション:Θはマイナス(保有コスト)。
- 売りポジション:Θはプラス(時間の経過=利益)。
- 重要:日中の安定相場では、価格が動かなくてもΘだけでプレミアムがじわじわ減る。
ただし“売り裸”は無限損失リスク。クレジットスプレッドで上限を決めるのが安全設計の基本です。
2. どんな日に狙う?(環境認識)
| 判定 | 条件 | 目安 |
|---|---|---|
| ◎(最適) | イベント無し+気配落ち着き | CPI/雇用統計/SQ/要人発言が無い平常日 |
| ○ | ギャップ後の保ち合い | 前場開始後30〜60分でレンジ形成 |
| ×(回避) | 急騰急落トレンド/IV上昇 | 指標待ち・地政学ニュース・先物出来高急増 |
目安:先物5分足のボリンジャーバンド±1σ内滞在が7割以上なら“Θ日和”。
3. 戦略の基本形:クレジットスプレッドでΘを取る
3.1 コールクレジット(弱〜中立)
- 売り:ATMより1〜2段上のコール(OTM)
- 買い:さらに上のコール(保険)
- 狙い:横ばい〜緩やかな下落でΘ+IV低下の二重取り
3.2 プットクレジット(強〜中立)
- 売り:ATMより1〜2段下のプット(OTM)
- 買い:さらに下のプット(保険)
- 狙い:横ばい〜緩やかな上昇でΘ+IV低下
距離(ストライク差)は2〜3段(50〜100円)を基準。受取クレジット:リスク=1:2〜3を目安に設計。
4. エントリールール(数値で明文化)
- 時間帯:前場10:00〜11:15、後場12:45〜14:30。
- 先物レンジ:直近1時間の高安幅≦0.7%。
- IV変化:直近30分で±0.5ptか横ばい。
- Greeks:新規構築後にΘ合計+60円/時以上、Δ合計|0.25|以内。
- 板の厚さ:売買するストライクのBid/Ask差が5円以内、建玉枚数が多いこと。
5. エグジット(利確・損切り)
| 種別 | ルール | 補足 |
| 利確 | 受取クレジットの40〜60%獲得で手仕舞い | 例:受取60円 → +24〜36円で利確 |
| 時間撤退 | エントリーから90分経過で未達なら撤退 | Θ効率が落ちるため“作業終了” |
| 損切り | 受取クレジットの100%逆行 or Δ合計>0.45 | 例:受取60円 → −60円で即撤退 |
| イベント前 | 昼休み・引け前に全クローズ | 持ち越し禁止(Θ狙いは日計り前提) |
ルールはOCO(利確+逆指値)で発注と同時に入れる。迷いを残さないのがThetaデイトレの生命線。
6. 建玉サイズと資金管理
- 1トレードの最大損失(スプレッド幅−受取クレジット)の合計を口座残高の1.5〜2.0%以内。
- 同時保有は左右どちらか1セットまで(コール側かプット側)。両建てはΓが跳ねやすいので非推奨。
- 余力30%を常に確保。板が薄くなる昼休み前後はサイズを半分に。
7. 実例シミュレーション(数値)
- 前提:日経先物 39,000円、期近、IV 18%→17.5%へ微低下、レンジ±0.5%。
- プットクレジット:
- 売り:38,875P 受取 65円/買い:38,750P 支払 35円 → 受取クレジット 30円、最大損失 95円。
- 入場 10:20、Δ合計 +0.18、Θ合計 +100円/時。
- 11:25 に先物 39,030円、IV 17.3%。評価 +60円(60%達成)で全返済。
- コールクレジット(別日):
- 売り:39,125C 受取 60円/買い:39,250C 支払 30円 → 受取30円、最大損失 95円。
- 12:55 入場、13:40 に先物横ばい・IV横ばい→+12円で撤退(時間撤退)。
ポイント:Δを小さく・Θを稼ぐ。価格が想定レンジを外れたら“時間に期待しない”で撤退するなんとなくでポジティブに期待してしまう気持ちよりもルールを優先する。
8. 逆境シナリオの対処
| 事象 | 兆候 | 即時行動 |
| 急なブレイク | 先物が±0.7%超で一方向 | 即クローズ。同方向のデビットスプレッドを短期で乗せ替え可 |
| IV反騰 | ニュース/要人発言でIV+1pt | クレジットは損切り、方向性が出るならデビットへスイッチ |
| 板の蒸発 | Bid/Ask差が10円超に拡大 | 成行は厳禁。指値で小刻みに退出、サイズが大きい時は分割決済 |
9. 実務フロー:チェックリスト(印刷推奨)
開始前(8:45〜9:00)
入場前(10:00 or 12:45)
監視中
10. よくある失敗と回避法
| 失敗 | 原因 | 回避策 |
| 裸売りで被弾 | 保険買いをケチる | 必ずスプレッドで上限設定 |
| 方向を当てに行く | Δを見ずに根拠なく逆張り | Δ合計の上限を数値化(0.25) |
| ルール未設定 | 利確/損切りが曖昧 | OCO必須・時間撤退を徹底 |
| イベント跨ぎ | Θ狙いのつもりがギャップで損 | 日計り徹底。持ち越し禁止 |
11. まとめ:Θは“当てずに勝つ”ための技術
- 環境選び(イベント無し×レンジ)が7割。
- クレジットスプレッドでΘとIV低下を同時に回収。
- 数値ルール(Δ・Θ・利確・時間撤退)を守るだけで、期待値が安定します。
“当てにいく”より“作業する”。明日からは、値幅よりも時間価値の減りに注目して、静かに期待値の高い利益を積み上げていきましょう。